片腕の人形
会心のできぐあいの朝食を食べて、帰り支度をしているとき、優衣がみんなを集めた。

「みんな集まって!」

優衣が声を上げる。

「はぁ~ん?」

俺らが優衣に近づくと、優衣は小さな袋を渡してきた。

「はい、荒崎くん。これ」

「え?」

俺はちょっと驚きながら袋の中身を見た。

中に入っていたのは、5つの人形が入っていた。人形の顔はみんな俺、健志、英明、三澤、優衣にそっくりだった。

「あ…これ…」俺は声を漏らす。

「すっご!俺にそっくりじゃん!」健志が感嘆の声を上げた。

「あんまり似てないけど…みんなに5つずつ」

優衣は少し顔が赤かった。

「こんなにたくさんよく作れたねぇ~。えらいえらい」

三澤は優衣の頭をポンポンとたたいた。

「ほんとにすごいできだ。よくやったなぁ」

英明は人形を見ながら言った。

「ありがと。がんばった甲斐があったよ」

優衣は照れ臭そうだった。

俺は優衣に笑顔で言った。

「サンキューな!大切にするよ!」

「ああ。ありがと!」健志もお礼を言う。

優衣は嬉しそうに言った。

「ずっと友達だよ。みんな」

優衣の言葉にみんながうなずいた。

ちょっとクサイけど別に悪い気はしなかった。



そのとき俺らは健志の話をすっかり忘れていた。

つまらない冗談だったし、気に留めるところはなにもない。

でも…あの話を聞いて、冗談だと思わなかったら、あの片腕の人形を思い浮かんだだろう。

あの人形を、山に捨てておけばよかったのかもしれない。




< 7 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop