片腕の人形
「トゥルルルル…トゥルルル…」


いくらコールしてもでない。

なんだか嫌な予感がするな…。

俺はメールと電話を数度繰り返したが、何度しても英明はでなかった。


すぐに健志に電話する。

「もしもし健志か?」

「それ以外にいるか?」

「英明、俺からも出ない」

「マジか?…なんかあったのかな?」

「キャンプから一言も話してないのか?」

「ん~。あいつ、キャンプから帰って風邪ひいたらしいんだけどさ、昨日にはもう大丈夫って言ってたんだ。でもそれから一回も音信不通で」

「う~ん…三澤とか優衣にも聞いたのか?」

「ああ…お前の後に聞いたんだけど、皆知らないって…」

「……」

「大丈夫かな…」

「ダイジョブだろ多分、風邪こじらせてケータイにでられないんだ。きっとそうだ。これは覆されない」

「なんでお前が断言できるんだ。家に電話しても出ないなんておかしくないか?」

「確かに」

「なんかあったんじゃないかな…事件に巻き込まれてたり…」

俺は溜め息をついた。

「お前は心配性のお母さんか?少しゆとりを持て。明日になったらもう一度電話しよう」

「昨日も今日もだめだったんだぞ。明日だって…」

「皆で電話するんだ。家にも。それででなかったら、訪問。で、いなかったら…」

「いなかったら?」

「しばらくしていなかったら、家族旅行へ行ったで結論」

「そんな強引な」

「それ以外に思い付かん。お前だけならとにかく、俺ら3人でも電話にでないなんて…」

「おい今なんつった?おい。ひどいこといったよな」

俺は自分の部屋に歩きながら言った。

「まぁなんかあったら事件になるだろ。親子そろっていないなんて旅行に決まってる」

「そうかもしんねぇけどよ…」

「じゃ、また明日。お前は心配しすぎだ」

「そう…じゃな」

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