人差し指を唇にあてて…
そこまで考えて何故自分で理由を聞かないんだと思った。
悩んでいるより、答えを聞いたほうが早い。
そう思い、机に突伏してた顔をあげ隣の席に目をやった。
隣人はノートをとっていた。
あ、今授業中だったんだと今頃ながら気づいた。
ちょうどその時、
「真井田、この応用問題やってくれ」
数学担当の担任は挑戦的な目をして私を見た。
私はもう一度隣人の方に向き直ると隣人と目が合う。
すると隣人はにやっと笑い、早く行ってこいよとでも言うかのように顎で前を促した。
私はゆっくりと立ち上がり、前の黒板の方へ行く間に黒板に書かれた問題の解法を考える。
休み時間になり私は隣人に話しかけた。
「瞬、話があるんだけど」
笑ってそう言うと瞬はたいした事がないと思ったのか、
「はい、なんでしょうか?」
とニコッと笑いながら答えた。
「瞬ってね、なんでここに転校してきたのかなって思って。
今頃なんだけど」
私がそう言うと、瞬は明らかに動揺しはじめた。
「…本当に今頃って感じですね」
瞬は耳を触りながら言った。
これは瞬が本当に困ったときに見せる癖。
必死に笑みを浮かべているけど癖までは隠せなかったみたい。
「うん。気になってね、ねえ教えて?」
と私は話を反らさせないうちにもう一度尋ねた。
「そ、それはですね…」
瞬は耳を触るスピードをあげ、何かを考えているようだ。
「それは何です?教えてください」
なかなか教えてくれない瞬を私は瞬を敬うような言い方をして押す作戦にでた。