人差し指を唇にあてて…
その時、
「桜様ぁぁぁぁぁぁー」
と呼びながらこちらへ走ってくる茜。
「ふぅ」
瞬は明らか安堵のため息を漏らした。
「桜様、あの問題解くなんてさすが桜様です」
「うん、ありがとう」
私はできるだけ邪魔されたという思いを心に閉まって茜に目を向ける。
「やっぱ桜様の弟子になってよかったです」
茜は上機嫌そうだった。
茜の心境がうらやましい…。
「そう?茜は瞬の弟子になってよかったんじゃないの?」
「華堂くんの弟子っていったって華堂くん、なんにも教えてくれないんですもん。それに比べて桜様は私にいっぱい勉強させていただけるんですよ、だから桜様の弟子で本当によかったです」
え…っと…
私、茜になんか教えてあげたっけ?
そんな記憶ないんだけど…
心当たりがなく首をかしげる私に瞬はつい先程までの態度とは打って変わってきらきらとした表情で口を開いた。
「なぁ茜、俺がお前に男紹介してやるよ」
「え?ほんと??イケメン??」
そう言った茜に、まだイケメンにこだわる癖治らねーのか、と呆れた声を漏らした瞬は茜の目の前に親指をグッと突き出すと
「安心しろ、俺の3倍かっこいいから」
と言い放った。