人差し指を唇にあてて…
「うん、完璧」

全身鏡の前で自分をくまなくチェックした後、部屋をでて朝食を食べに向かった。


「おはようございます」

私が食堂へ行くと珍しくお父さんがいてコーヒーをすすっていた。

「おはよう、桜」

ゆったりとした動きに娘の私ながらも見惚れてしまう。

「お父さん、久しぶりだね」

「ああ。やっと我が家に帰れたよ」

そう言ってお父さんは嬉しそうに笑う。


私のお父さん、真井田 勇輔はSakuraグループの社長。

代々続いている真井田財閥は真井田本家の血を継ぐ者しか偉い立場につけない。
つまり、お父さんは立派な本家の者でその一人娘である私も本家の子。


だから私、真井田 桜はその次期社長となる予定なのである。

……社長であるお父さんはこの家に滅多に帰ってこない。
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