Call My Name
路肩に車を停めている兄貴が、俺に気がつくと、手をひらひらと振ってきた

なんか…テンション高くねえか?

兄貴の満面の笑みを見た俺は、冷めた感情が心に流れ込む

いや、別に兄貴のテンションが高かろうが低かろうが俺には関係のないことなんだけど

これから20分近く一緒に、密室の中にいると思うと、このテンションに俺がついていけるのか?っていう心配があるんだよな

何か、いいことでもあったのか?

日曜出勤で、いいことねえ

ツバキと会えたのか?

ツバキと話でもできたのだろうか?

…て、兄貴もツバキ中心の生活だよなあ

ツバキも、兄貴を中心にして物事を考えてるし、な

俺が大怪我してるのを目の前で見ていて、俺の心配よりも兄貴が悲しむっつうほうの心配をしてるんだから

…たく、嫌になるカップルだ

俺は助手席に座ると、兄貴の顔を見た

兄貴は、緩みきった笑顔で俺の頭をポンポンと叩いた

「少し痩せた?」

兄貴が俺の頬を手の甲で触れると、首を傾げた

「よくわかんねえ。毎日体重計に乗ってるわけじゃねえし」

「背も伸びたのかな?」

「知らねえよ。毎日、計測してるわけじゃねえんだから」

兄貴がくすくすと笑うと、ハンドルに手を置いた

「大きくなったねえ」

「なんだ、そりゃ…」

意味がわかんねえ

俺は前髪を掻きあげると、ふうっとため息を吐き出した

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