Call My Name
「親父はどうしたいんだよ。親父は、やっぱ…兄貴がいいのか?」

俺の言葉に、親父の返事が遅れる

いや…どう答えていいのかわからないのだろう

本心は、どうせ…兄貴に後継してもらいたい…とかって思ってるんだろうし

俺より、兄貴が継いでくれるほうが、世間体的に見ても、いいんだろうしな

俺は自嘲した笑みを浮かべると、親父に聞かれないようにため息をついた

やっぱ、兄貴がいいよな

「いいよ。俺、どっちでも構わないから」

『景?』

「兄貴が本気なら…別にそれでいい」

『いいのか?』

「いいも、悪いも。親父は兄貴がいいんだろ? 俺は何も言えねえよ」

俺は、携帯を耳から外すと、通話を遮断する

俺に…権限はないんだろ

親父は兄貴が良くて、俺は結局、兄貴の代理にすぎねえんだ

「…くそっ」

俺は携帯を床に投げつけると、布団の中に潜った

俺って、何なんだよっ

一番、『俺』という人物を認めてもらいてえヤツに…全然、認めてもらえてねえじゃん

親父…俺は、あんたにとって兄貴の代わりでしかねえのかよ


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