Call My Name
「見合い…は?」

「しねえよ。しても、きちんと断るさ。親父を脅したっていいんだ。見合いをするなら、俺は継がねえって」

兄貴が、重苦しい息を吐き出すと、肩をがっくりと落とした

「景が、好きでもない人と結婚をして、家を継ぐと思うと、心が張り裂けそうに辛かった」

兄貴が、悲しい顔をして俺の腕を掴んだ

「前に、車で…スイレンちゃんとは世界が違うって言ってたのを思い出して。もしかして景は、スイレンちゃんとすぐに別れるつもりでいるんじゃないかって…」

「別れるかっつうの。別れるつもりでいるなら、最初から付き合わねえよ」

兄貴が机に顔を伏せると、「良かったあ」と小さい声で呟いた

「良くねえだろ! ツバキが泣いてるんだから。ほら…さっさと追いかけろって」

「え? あ、ああ。そうだね」

兄貴は椅子から立ちあがると、早足で準備室を出て行った

…てか、さあ

他の奴らに付き合ってるってバレ程度に、追いかけろよ

じゃねえと、クビになっちまうからさ

「俺が出る幕でも無かったな」

兄貴が出て行ったドアの向こうから、崎先生が顔をひょこっと出した

「あ?」

俺は崎先生の顔を見ると、ニヤッと笑った

「兄貴は、ちょっと思い込みが激しいんだよな。すぐに勝手に暴走するんだ」

「お前もな」

崎先生が、俺の前に立つと髪の毛をぐしゃぐしゃにする

「ま、兄弟だからな。似ちまうんだろ」

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