Call My Name
第十二章 見合い珍騒動
おふくろが、親父をベッドの中で丸めこもうとしたらしいが、結局無駄な努力になった

珍しく親父が、おふくろの意見を聞かなかったんだ

怒ったおふくろは、さっさと屋敷を出て行った

…兄貴の見合いのときには、即効帰ってきたくせに、俺の場合はもうどうでもいいらしい

というか、母親いわく、好きな女がいるのに、見合いをする俺が気に入らないらしい

好きな女がいるとわかっているのに、俺に見合いをさせる親父にも激怒していて、親父が会いに行ったら…閉め出しを喰らったとか

ヤクザの組長が、妻に閉め出しを喰らうって…情けねえ、とか思ったけど、俺も同じようなもんだ

スイレンが口を聞いてくれない

やっとゆっくりと会える週末になったというのに、ゴミ箱に突っ込んだままの見合いに写真に気がついたスイレンが、たった今、激怒している

ヒステリックに感情を俺にぶちあててくれるなら、まだ言い訳の仕様がある…というか

スイレンの気持ちが読み取れるんだが…目の端を吊り上げて、怖い顔をしたまま、無言でキッチンに立っている

それが、余計に怖くて…俺は、スーツのまま、ちらちらとスイレンの様子をうかがった

テーブルの上には、捨てたはずの見合い写真が広げて置いてある

帰ってきたときには、もうこの状態で…スイレンが黙々と料理を作っていたんだ

先週、景からアパートの鍵を貰ったし、学校が終わったら、直で俺のアパートに来て、料理を作って待ってるね…なんて嬉しいことを言ってくれて、ルンルンで家に帰ってきたら…こんな状態で

俺はいったい、どうしたらいいのか…

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