Call My Name
第三章 父親から命令
鏡で見る俺の顔をもっと険しくして、皺をつけ足して……んで、髪の色をグレーに変えた男が目の前で胡坐をかいていた

いつ見ても怒っているような…不機嫌なツラが俺を見ている

俺は親父から視線をそらすと、天井を見上げたり、畳の網目を指先でいじったり…落ち着きなく親父の前で正座していた

親父に別室に呼び出されるって、めっちゃ緊張するんだよな

何を怒られるんだろうって、つい身構えちまう

怒られるようなことを最近した覚えはないけど…悪いことをすればするほど喜ぶ変わった父親だ

荒れた生活を送っている俺を見て、まともな親らしい発言をするような真面目な父親じゃねえ

俺はライオンに睨まれた小動物のように、びくびくと心を震わせた

「最近、お前は良いツラをしている。もっと上に行け。ただの街の不良で終わるな。暴走族を手に入れろ」

あ? 暴走族?

俺は首を傾げた

「まずは青だ。青の暴走族のトップの座を奪え。それから赤を…」

「無理だろ」

俺はあっさりと答えた

喧嘩なんかしたことのない俺が、できるわけねえじゃん

それにバイクだって乗ったことがねえっつうのに…無理っつうの

「景、お前は…」

「…わかってる。俺しか跡目が無くて、親父が焦ってるのを…知ってるよ。ちゃんとこの家は俺が継ぐから」

まあ…噂での俺なら、喧嘩っ早くて、強いって言われてっけど

実際の俺は、誰も殴ったことねえしな

「今すぐになんて、無理だよ。もう少し待ってくれよ。もう少し…」

俺は下を向いた

「まずは喧嘩を覚えるから」

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