Call My Name
兄貴との約束の時間より数分遅れて行った俺は、目を丸くした

兄貴のほかに、崎先生まで補習の授業に参加しているじゃないか

「なんで?」

俺はぽかんと口を開いたまま、教室のドアに立ちつくした

「『なんで?』と聞くか? 俺の授業までサボっておいて」

崎先生が、眉をピクっと動かして俺を見てきた

「あ…そっか。俺、今日…さぼった」

俺は教科を持ちなおすと、スタスタと教室の奥に足を進めた

補習と行っても、兄貴と俺だけの個人授業みたいなものだ

そこに今日は、崎先生も加わった

ああ…なんか、今日は、帰りが遅くなる気がする

「あ…兄貴、一年で『瑞那』って名前のつく女子を知ってるか?」

俺が質問すると、兄貴の顔がぱっとあがって崎先生を見た

「僕より……冬馬のほうが知ってると思う」

「そうなの? 数学の担当?」

俺は英語の教科書を開きながら、質問を投げた

「赤の女だ」

崎先生の声がワントーン下がった

え?

あんな大人しそうな子が、赤族の女かよ

謝ってばっかで…ビクビクしてるような子がか?

信じらんねえ

騙されてるんじゃねえのか?

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