Call My Name
親父は親父で、組を背負っていく人間になるように、喧嘩をしろとか…夜遊びに慣れろとか…うるせぇーし

ツバキはツバキで、スイレンに近づくな…ってうるせえ

兄貴は、兄貴で…組の継承を断っておきながら、俺に喧嘩をするな、とか、授業はしっかり受けろとか言いやがって

親父に褒められれば、兄貴に怒られて…兄貴の安心した顔を見れば、親父に怒られる

スイレンの喜ぶ顔を見れば、ツバキに怒られるし…ツバキの言うとおりにすりゃあ、スイレンの切ない顔を目の当たりにする

俺はどうすりゃ、いいんだよっ

自分勝手な発言ができるヤツはいいよな

それだけで、満足できるんだから

じゃあ…俺はどうすればいいんだよっつうんだ

俺の意志は無視かよ

俺の気持ちは、完全スルーかよ

いつもそうだ

兄貴が一番で、俺が二番

兄貴が駄目だったから、俺が……

「景、聞いてるの?」

兄貴の冷たい手が、俺の頬に触れられて、俺はびくっと全身が跳ねた

「…き、聞いてねえよ」

「僕でいいなら、景の心の悩みを聞くから」

俺は舌打ちをすると、兄貴の腕を叩いた

「やめろよ。兄貴のそういう偽善者ぶった態度…むかつくんだよ」

俺は椅子から立ち上がるなり、兄貴を睨みつけた

「兄貴は…ツバキの心配でもしてろ」

「え?」

「青族のチョーに、ツバキもナデシコも…狙われてたんだよっ」

「景…もしかしてツバキたちを守るために?」

「別に。いいだろ…関係ねえよ」

俺は兄貴に背を向けると、スタスタと歩き始めた

「景、待ちなさい。まだ話が……」

俺は兄貴の呼びとめる声を無視して、部屋を飛び出した
< 66 / 149 >

この作品をシェア

pagetop