Call My Name
第八章 新世界へ一歩
『知らなかったんだ。スイレンが、あいつのこと…あんなに想ってたなんて』

兄貴の部屋から、ツバキの動揺する声を聞こえてきて俺は思わず足を止めた

え? スイレン?

ツバキの口から出てきた名前に、俺は身体が固まる

まるで金縛りにあったみたいに、足が動かなかった

何の話をしているんだよ

『ツバキは、景の将来を知ってるから…親友を巻き込みたくなかったんでしょ?』

俺? は?

『だって…スイレンには似合わない。こんな世界…』

『ツバキ、人の心ってさ。誰に何と言われようとも、止められるものじゃないよね? 僕たちだってそうだったでしょ? スイレンちゃんだって、景自身を見て好きになったんだと思うんだ。家がどうとか…将来がどうとかって関係ないんじゃないのかな?』

『でもスイレンは……』

『二人がどうなろうが…僕たちには何も言えないよ』

俺はふっと笑みが顔に広がった

スイレンが、俺を…ね

こんな俺でも、好きだと思ってくれる人間がいたとは…驚きだ

ツバキの言うとおりだ

スイレンにこの世界は似合わないだろ

俺とスイレンが一緒になって、誰が喜ぶっつうんだよ

俺は全身の金縛りが解けると歩き出した

俺は迷惑をかけたナデシコと瑞那に謝ったら、静かに姿を消す…そう決めたんだ

スイレンにも内緒でな

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