ケータイ小説ストーカー
「もうケータイ小説家になる事は諦めて、これからは趣味として書いていこう」
そう言葉を吐き出すと、萌絵の気持ちは一気に軽くなった。
オリジナリティを追及しようとしていた為、ランキング上位の作品は敢えて読まなかった。
それは、読みたくなかった訳ではなく、気にはなっていたものの意図的に読まなかっただけだ。
"馴れ合い"と言われる事が嫌で、読んだ作品に感想を残す事も控えてきた。
だけど、他の作家とコミュニケーションがとりたくなかった訳ではなく、親しく話をしてみたいと思う作家はいたが、仕方無く関わらない様にしてきた。
「う~ん…今日からは、ケータイ小説文庫を楽しめるぞお!!」
萌絵は晴れやかな表情で大きく背伸びをすると、携帯電話を覗き込んだ。
萌絵のケータイ小説家になりたいという強い思いは、本人が気付かない内に、重い足枷になっていたのだ。
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