ケータイ小説ストーカー

萌絵が花音の返事を確認したのは、布団に潜り込む直前だった。

律儀な花音に対し、返事は必ずしてくれるという、根拠の無い信頼感があった。その萌絵の信頼を、花音は裏切らなかった。


大きなあくびをした萌絵の右手には携帯電話。

その右手は極自然に、お気に入り登録しているケータイ小説文庫にアクセスし、本棚が画面に表示される。

23時――
いつも就寝するこの時間に、萌絵はケータイ小説文庫をチェックする事が日課になっている。


「あ――」

萌絵の目に映ったのは、自分の感想に対する花音の返事だった。

萌絵はその丁寧な返事を読み、感動で手が震えた。


今まで何度か感想を書いて返事を貰ったが、こんなに嬉しかった事はなかった。

それは、単なる付き合いで書いた感想で、本心ではなかったからなのかも知れない。

いや、そもそも読みたくて読んだ作品ではなかった。


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