天使の羽が降る夜に
天使 間違える
未紅
私の名前は未紅。職業は天使。
亡くなった人の魂を運ぶのが仕事。
「え~っと、次は・・・」
亡くなる人のリストが載っているノートを開く。
人が亡くなる1ヶ月前になると私たち天使が持っているノートに名前が書かれる。
日付、名前、年齢、場所その他家族のことまで結構細かく載っている。
「日付が今日の夜中1時。場所は病院の彼の病室・・・名前は・・・沢田 舜17歳か」
呟きながらその場所へ向かう。
「若いのに・・・残念だね。・・・心臓病・・・か。」
いろいろ書いてあるのでその人がどんな人か、少しだけ分かる。
寿命をまっとうしたおじいちゃんやおばあちゃんは、運ぶのは楽だけど、まだ生きて欲しかった人の魂を運ぶのはちょっと気が重くなるときがある。
私のお師匠様の大天使様は「感情は時に天使の心を狂わせる・・・感情を捨てなさい」と、いつも言っている。
・・・だけど私はなかなか割り切れなくて・・・ときどき泣きながら魂を運んだりしてる。
・・・簡単に言うと未熟者なんだよね。
「あ、あった・・・あそこの病室だ」
私はそっと彼が横になっているベッドの脇へ降りる。
「ほえ~、綺麗な男の人だな~・・・イケメンだね」
横になって目を閉じている彼は本当に綺麗な顔をしている。
「こりゃ~、モテただろうなぁ」
独り言を呟きながら、私は彼の頭の上で手を合わせ・・・祈った。
そうすると・・・・体の中から魂が出て・・・・こない?
「あれ?おかしいな」
もう一度祈る。
「あれ~?何で??出てこないじゃん・・・今までこんなことなかったのに」
その時
「ああ?誰だようるせーな」
亡くなっているはずの目が開いて・・・口を利いた?
「え?‥え!?生きてる?」
な、なんで?…しかも私の姿‥‥見えてる?
「ああ!しまった!!」
思わず大きな声を出してしまった。
彼は私を見ると、怪訝そうな顔をして
「お前・・・誰?」
と、体を起こしながら聞いた。
…うほ~、目を開けると思った以上に素敵だわ~・・・・・・・って違う!
ヤバイわ!この状態は非常にまずい・・・しかも気が緩んでいたせいで、姿が見えてるし・・・・どうしよう。
彼から目をそらし挙動不審になっている私に
「おい、お前は誰だって聞いてんだよ!?何でここにいる?」
怒り気味で声を荒げた。