天使の羽が降る夜に
「え、え~と、・・・そ、掃除のおばさんです」
明後日の方向を見ながら言う私に
「…嘘付け。・・・その羽はなんだよ」
指を指される。
「あ!」
慌てて羽を隠す。
「頭の輪っかは?」
あきれたように彼が言って
「あ!」
慌てて隠す・・・・。
あ、汗が出てきますが・・・・ここは逃げるが勝ち!
すっと姿を消すと
「てめぇ、逃げんじゃねー。お前の知り合いに言うぞ!」
え!知り合い?・・・誰に?いったい誰に?
この人・・・何か特別な人なの?
そのまま消えようと思ったんだけど、でも彼の言葉が気になって仕方なく姿を見せた。
「お前さ、・・・なんなの?」
彼は私の方に体を向けた。
「え・・・」
返事に困っていると
「その格好はどう見ても・・・天使ってとこだな」
「う・・・・」
「当り?・・・その天使が俺になにか用ですか?」
何か用かって・・・この人は私の姿を見ても何とも思わないの?
やっぱり何か特別な人?・・・ううん、そんな訳ないはず、だとしたら・・・。
「あの、・・・えっと、今日は何月何日ですか?」
「ああ?・・・11月4日だけど・・・」
やっぱり普通に答えてる。
ん?
「・・・今なんと申された?」
「あ?11月4日だよ。なんだよ?はっきり言え!」
怒った顔があまりにも怖くて
「迎えに来る日にちを1ヶ月間違えました!!」
はっきりと言ってしまった・・・。
「は?・・・」
彼は面食らった様子だ・・・。
ああ、どうしよう、どうしたらいいんだろう。
しばらく下を向き何か考えていた彼が、ゆっくりと顔を上げた。
「・・・何?俺・・・1ヵ月後に死ぬの・・・?」
その寂しそうな表情に、胸が痛む。
・・・私は何て事をしてしまったのだろう。
「あ、はい。・・・私の持っているノートでは・・・そうなってます」
隠しても駄目だと思って、恐る恐る口にした。
「まじか・・・・」
また何か考えている様子だ。
「そ、それでは私はこれで・・・」
もう、行こう。そう思って行く準備をしたとき
「ちょっと待って」
彼が私を引き止めた。