天使の羽が降る夜に


眠りにつくと夢を見る。

大天使と未紅。

『お前が見張っていること・・・ばれているな』

未紅。ばれてるぜ?

『まぁ、ばれたのは仕方がない』

あ?いいのかよ。

『未紅。大事なのはここからだ。・・・その人間に特別な感情を持ってはならぬ』

特別な感情?

『気持ちを伝えてはいけないのでしょうか?」

誰に?・・・前に言ってた好きな奴?

「大天使様はお分かりなんですよね・・私が・・人間に惹かれていること・・・」

え?・・・未紅が好きな奴って俺か?

『未紅。伝えて彼もお前に惹かれているとしたら、お前はどうする?』

『それでも、お前はあの者の魂を運べるか?』

『彼が亡くなるところを見て、お前はちゃんと彼にさよならを言えるのか?』

そうだな。俺はもうすぐ魂になるんだよな。

未紅。

俺はお前にちゃんと伝えようと思う・・・今の気持ちを・・・。

夢が終わると未紅が頭の所にいるのが分かる。

起きてからかってみると、あせるあせる・・・面白いくらいに反応してくれる。

・・・俺は嬉しいぜ!

この気持ちを伝えようと思ったとき

「舜君いた?」

純ちゃんだ!ヤバイ!

未紅を見ると、羽も輪っかも消して、服は病院の物になっていた。

・・・咄嗟の判断にしては上出来!

「あ、あれ?お客さま?」

未紅を見て不思議そうな顔をする。

「あ、ああ、まあね」

なんて言って誤魔化そうかな・・・と思っていたら

「あ、私未紅と言います。この病院に入院していて・・・その、・・舜さんのファンなんです!」

未紅が口を開く。

あ、ばか!名前言うなよ!

・・・しかもファンとか・・・何それ・・・友達になったでいいじゃん。

「あ、そうなんですか」

純ちゃん困ってるな・・・。

「あ、では、わたしはこりで・・こりで・・・しちゅれいちます・・」

・・・こりでって何だよ!

緊張しすぎだって言うーの!!

もう・・・ダメだ。

俺は未紅が出てから腹を抱えて笑った。

あいつ・・・本当に・・・ばかだ・・・。





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