天使の羽が降る夜に



話をしていると、

コンコン。

病室をノックする音がして

「舜、いた?」

綺麗な女の人が顔をだした。

未紅は咄嗟に消えたのでみられてはいない。

「未那ちゃん!」

「あ〜、いたぁ」

「返事する前にドア開けないでよ・・・全裸だったらどうするんだよ」

「・・・ごちそうさまです」

「なんだよそれ」

ふふっと笑って入ってくると椅子に腰をかけた。

「元気そうじゃん」

「うん、まあまあかな」

「そっか・・・あ、これお花なんだけど」

「おお!綺麗だね、ありがとう」

「舜ってお花好きだったっけ?」

「花が好きなのは純ちゃんに影響された兄貴です」

「・・・そっか、暁のほうだったか・・舜はシュークリームだったっけ?」

「そそ」

「失敗したかな」

「いや・・・殺風景だったし。貰ってよかったよ。ベッドの下に花瓶があるから」

「わかった」

未那ちゃんはそう言うと花瓶を取り出して、ちょっとだけ水を入れ花を飾った。

「最近はお花はあんまりお見舞いには向かないみたいだよね」

「アレルギーとかあるからね」

「だけどさぁ、舜が花が好きだろうって思い込んでたからなぁ」

「ププ。思い込みが激しいのと実行しないと気が済まないところは変わってないね」

「‥‥痛いところ突かないでよ‥‥それで仕事では失敗ばかりしてるのに」

苦笑いしながらベッドの横にある椅子に腰を掛けた。

「ところで未那ちゃん、美容師のほう頑張ってるみたいじゃん。雑誌とかにたまに載ってるよね?」

「・・・目ざといね舜。・・少しずつだけど仕事が増えてんの」

「へぇ〜。じゃあそのうちカリスマ美容師になる?」

「どうかな?厳しい世界だからね・・・」

「・・・そうだ。未那ちゃん今日帰るの?」

「ううん、明日帰る」

「じゃあさ、俺の髪切ってよ・・・・前に約束したじゃん」

にっこりと笑うと、

「そう思ってちゃんと道具持ってきたんだ」

仕事道具の入っているカバンを俺に見せた。

「・・・さすが」

得意げな顔をして美容師の道具を取り出す。

「ここでやっていいのかな?」

きょろきょろと未那ちゃんは病室を見回す。

「・・・どうだろ」

俺もわかんねー。

「・・・ちょっと看護師さんに聞いてくるね」

「わかった」





< 35 / 106 >

この作品をシェア

pagetop