天使の羽が降る夜に
未那ちゃんは看護師さんと一緒に戻ってきて、準備をしてくれた。
「終わったら呼んでくださいね」
「はい、ありがとうございます」
看護師さんは部屋を出る。
「髪、だいぶ伸びてるね」
未那が髪をとかしながら言う。
「うん、入院する前に行けなかったからさ」
「・・・それにしても綺麗な顔立ちだよね・・・暁の高校のときよりいい男なんじゃないの?」
「それは・・・当たり前」
「は?・・・舜、ナルシストになってる・・・」
「嫌でもなるって・・・大体皆そんな話ばっかりだし・・・兄貴は全く興味ないけどね」
俺の言葉に何かを思い出したように話し始める。
「そうよ!暁が自覚ないから本当に大変だったのよ」
「何が?」
いつの話なんだろう。
「高校の時、暁って女嫌いだったじゃん。でも、モテたからさ」
「うん」
「それなのに、自覚しないし。女嫌いなんだと思ってたら純と付き合ってるしさ」
「なるほど‥‥兄貴ってそんな感じだったんだ」
「そうよ。私だって騙されてたわよ。だから・・・純と付きあったことがバレてから女嫌いじゃないってわかって。その後がね・・・純はいろいろ陰で言われてて大変だったみたいよ・・・」
なんだって?
「兄貴はなにしてたの?」
「助けてたわよ?・・・でもね簡単にはいかないのよねー。私たちも助けたからなんとかなってたけど・・・・そのうち洸一が香奈枝と付き合い出して・・・これもいろいろあったわ・・・」
助けてたなら許してやる。
純ちゃんのことちゃんと守れよな。まったく。
「大変だったんだね」
純ちゃんが!‥‥俺の心の声だ。
しかも洸ちゃんもかよ。
「まあね・・・それにしても柔らかい髪だね」
カットしながら未那ちゃんが呟く。
「あ~、良く言われる・・・禿げそうで嫌なんだけど」
「ププッ・・可愛いかもよ?」
「人事だと思って・・・」
からかうなよな。
「未那ちゃん彼氏は?」
「う~ん、今はいない」
「そっか・・・翔ちゃんとは?」
「は?翔太?・・・・とっくに別れましたけど?」
「いや、そうじゃなくて・・・会ってんの?」
「・・・全然、別れてから全く連絡とってないし、こっちに帰ってきても会わなかったな」
「・・・そう。元気でやってるみたいだよ」
「うん。そのことは純から聞いてる」
「より・・・戻さないの?」
「翔太と?」
「うん」
「どうかな?会ってみないと・・・翔太も新しい彼女いるんじゃないの?」
「・・・それは、どうかな?そこまでは聞いてないけど」
「・・・よし!出来た」
そう言って鏡を舜に渡す。
「どう?」