天使の羽が降る夜に

「おお!すごい!いいじゃんこの髪型・・・未那ちゃんプロみたいだね」

鏡を持ちながら言うと

「ちょっと・・・みたいって何?プロなんですけど!」

カットした髪の毛を処理しながら未那ちゃんは口を尖らせる。

「あはは、そうでした・・・おいくらになりますか?」

「は?お金なんて取らないわよ」

未那ちゃんはお金なんてとらないことはわかってた。

「じゃあ、俺の好意を受け取って貰いたいんですが・・・」

「はい?・・・好意って・・・?」

片付けながら不思議そうな顔をする。

「もうすぐ俺の好物のシュークリームを持ってくるはずです」

俺の行為はもしかしたら、おせっかい。

だけど、やっぱり、あの人を未那ちゃんに会わせたい。

「・・・何訳の分からんことを言ってるのかね?」

未那は片づけが終わると、看護師さんに袋を貰って、切った髪の毛を捨ててもらった。

「いや~、いい男になったわ。・・・モデルお願いしたいくらい」

「あはは・・・ファンができるからやめておく」

「出たわ!ナルシスト発言。・・・・そんな舜嫌だ~」

「あはは」

と、その時

コンコン

部屋をノックする音。

「はい」

お、来た来た。

「お~い、舜。いきなりシュークリーム買って来いとか言うな」

入ってきたのは

「しょー・・・た?」

未那ちゃんの驚いた顔と

「あ?・・・・・未、未、未那・・・・?」

翔ちゃんの動揺した態度。

思った通りの反応に俺は嬉しくなる。

「俺からの好意」

ニヤリと笑うと

「・・どこが好意なのよ」

未那ちゃんは俺を軽く睨んで

「舜、どういうこと?」

翔ちゃんは焦ってる。

「あのさ、翔ちゃんに彼女が出来るたびに・・・一番下の良太が愚痴りにくるのよ」

「は?」

目がまん丸ってこういうことを言うのか。

‥‥なんて感心している場合じゃないか。

「今の彼女はここが気に入らないとか・・・いろいろさ。・・・その後で必ず未那ねーちゃん、どうしてるのかな・・・って落ち込むわけ」

「え?・・・良太のやつ」

「あんないい女と別れるなんて・・・ばか兄貴!とね」

翔ちゃんと未那ちゃんが初めて目を合わせて笑った。

「俺、もう愚痴聞いてやれなくなりそうだから・・・・ここでやり直してもらわないと困るのよ」

「舜・・・お前・・・」

やっぱ、驚くよな。





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