天使の羽が降る夜に
聖夜さんは私に近づいてくると軽く唇にキスを落とす。
・・・えっ?
私も微笑んで聖夜さんを見てる。
・・・私と聖夜さんは恋人同士だった?
「これから仕事か?」
「そう」
「未紅はドジだからな・・・気をつけて行って来いよ」
「失礼ね!もう何年やってると思ってるの?大丈夫よ・・・」
・・・幸せそう。
周りからも声が聞こえる。
「未紅様と聖夜様・・・お似合いね・・・」
「ほんと・・・あの二人が結ばれてくれたら私たちは安心して仕事ができるわ」
「未紅様の大天使への試練はもうそろそろ?」
「そうね・・・合格した暁には・・・お二人は夫婦になられるわ・・・」
「・・・未紅様の合格をお祈りいたしましょう」
「そうしましょう」
・・・・なんて事なの・・・私は聖夜さんと夫婦になる予定だったというの?
ではなぜ・・・・私には・・・・そんな記憶・・・1つもない・・・。
もしかしたらこれは聖夜さんが都合よく見せているものなのかしら・・・私が舜に命をあげたいなんて言ったから・・・。
急に景色が変わる。
ここは病院?
・・・そうよ。舜が入院している病院・・・でも建物も周りの景色も全く違う・・・・。
病院の中庭には絵を描いている男の人・・・・描いている絵になんとなく見覚えがある・・・・・・・。
昔の私はその人の描く絵を見ている・・・・・・・そう・・・思い出した・・・・。
私は魂を集めてるときに、時々中庭で絵を描いている男の人を見つけていた。
「素敵な絵を描く人だな・・・」
そんな事を思いながら仕事をしていたのを覚えている。
それから彼が描く絵をこっそり覗き込むようになった。
本当に素敵・・・私は彼の才能に惚れ込んでしまってたのだ。
ある日その絵を切り刻む彼の姿を見た。
何故かと思ったら・・・・彼は白血病でもうすぐ亡くなる運命にあった。
「絵が描きたい・・・・ただそれだけだったのに・・・・」
彼は綺麗に描けていたキャンバスを握りしめて泣いていた・・・。
私はとても胸が痛んだ・・・。
こんな素敵な絵を描く人を・・・なんとか助けてあげられる方法はないのかと・・・。