天使の羽が降る夜に


「未紅・・・こっちに来て?」

俺が言うと、泣きながら抱きついてくる。

「未紅・・・俺、夢で未紅の過去を見た」

「え?」

驚いて離れようとする未紅を抱きしめて離さなかった。

「しゅ、舜・・・いったいどういう事?」

未紅は腕も中でもがいている。

「・・・俺、未紅が大天使のところに戻ると夢を見るんだ・・・。未紅の気持ちが分かったのも全部そのおかげなんだけど」

「いったい何故?」

もがくのをやめて俺の顔を見る。

・・・可愛いな・・・。

「・・・どうやら聖夜が心配して、俺に見せていたみたいだ」

俺は抱きしめてる腕に少し力を込める。

「・・・聖夜さんが・・・」

「・・・昔、未紅と聖夜は恋人同士だったんだな・・・」

自分で言って・・・むかつくな・・・。

「・・・うん、でも、全然記憶がなくて・・・」

「そうか・・・」

「舜、あの・・・」

「未紅・・・」

「はい・・・」

「俺は俺の運命を変えようとは思っていないんだ・・・」

「え・・・・」

「未紅の気持ちは本当に嬉しいんだ・・・。でも、出来ない」

「舜・・・」

「未紅はこれから沢山の魂を集めていかなくちゃいけないだろ?・・・その使命をちゃんと果たして欲しい」

「・・・だよ・・・」

「未紅?」

目に涙が溢れてくる。

「・・・ムリだよ」

「・・・どう・・して?」

「・・舜のいない世界で頑張るなんて・・・ムリだよぉ・・・」

俺の胸に顔を埋めて泣く。

「ムリ・・・ムリなの・・・考えたくない・・・考えられない・・・」

未紅・・・気持ちは同じだな・・・。

俺もお前に命を貰っても・・・お前のいない世界で生きてても意味ないんじゃないかって・・・そう思った。

未紅も同じ気持ちで嬉しかった・・・でも・・・。

「未紅」

呼びかけても首を横に振るだけで俺をみようとしない。

「未紅!」



< 52 / 106 >

この作品をシェア

pagetop