天使の羽が降る夜に

聖夜



未紅が俺のところに来て「舜が話がある」と言われたときは、夢の事がバレて文句でも言われるのかと思ったが・・・・・。


「聖夜は未紅をどう思ってる?」

・・・その質問に何か意味があるのか?

でも舜は

「重要なこと」

と言い切った。

好きか?・・・・難しいな。

嫌いではないが・・・。

正直に言ったところ

「それでも未紅のことを頼みたい」

と言う・・・・なぜそこまで未紅の事を考える・・・。

「未紅は・・・笑顔をなくしてしまうかもしれない・・・それが一番怖い」

未紅の笑顔・・・か。

あの笑顔は俺が引き出せるものじゃない。

『・・・舜がいなくてはあの笑顔は出せないのではないか?』

「・・・まぁ、あの笑顔は俺のもんだからな。・・・でも、いずれ聖夜に向けられるときが来ると思う」

『俺に?』

・・・まさか。

そんなことあるはずがない・・・未紅は俺のことを好きなわけじゃなかった。

それは俺も同じことだ・・・パートナーという形でしか相手を必要としなかった。

そんな2人に・・・好きなどという感情が生まれてくるものなのだろうか・・・。

「聖夜なりに未紅を大切に思ってることが分かった・・・悔しいけどこれから先未紅の側にいるのは俺じゃなくて・・・聖夜だから・・・・」

『舜・・・どうして・・・』

「ん?」

なぜ、そんなに相手のことを思いやれる・・・。

俺が憎くはないのか?もっと長生きしたいとは思わないのか・・。

『いや・・・』

こんな男だからこそ・・・未紅は好きになったのかもしれないな・・・。

「それで、これを渡しておきたい」

受け取ったのは宝石の埋め込まれたピアス。

「愛する気持ちが分かったとき、それを付けて未紅を守って欲しい」

俺に舜の気持ちが分かるときが来るのだろうか・・・。

「ん?心配なんだ未紅が・・・正直聖夜がうらやましいよ・・・ずっと一緒にいることができるんだもんな・・・」

・・・それが本音だろう。

舜からしてみたら・・・未紅の隣にいるのは自分でありたいと願うのが普通だ・・・でも、その感情を押し殺すのか・・・・それは自分のためか?

・・・いや、未紅のためなのか。


俺には無い感情‥‥か。











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