天使の羽が降る夜に
「昔、一度だけ天使の命を人間に与えたことがあったそうです」

「天使の命?」

「はい。私たち天使の命を寿命が来た人間に与える・・・もちろん与えた天使は消滅します」

「・・・それで?」

「与えられた人間はその命に感謝して、生きるものだと思っていましたが・・・欲にとらわれ結局ひどい生き方をした・・・と聞きました。・・・それから天使の命を与えてはならないと決まりができたのです」

「ふうん」

じゃあ、俺が生きたいと願うと、未紅が消えてしまうのか・・・それは出来ないな。

「他の天使たちは何をしているの?」

俺の質問に困ったような顔をする未紅。

「実は・・・・私以外の天使を見たことがないのです」

「は?」

「大天使様から聞いた話と、神のところへ行くルートに一人門番がいますが、その方以外見たことがないのです。私が一人前の天使になったら見えると教えられました。なので本当にいるのか良く分からないのです・・・。」

「・・・うーん」

「私は天使ですが悪いことをしてなくなった人を連れて行く悪魔もいると言われています」

「うん」

「昔は天使と悪魔で一緒に魂を集めていたこともあったらしいのです。そのほうが効率が良かったからとか。でも、惹かれあってしまう天使と悪魔が多く仕事に支障が出るために廃止になったとか‥‥だけどこの話もすべて大天使様に聞いた話なので本当かどうかはわからないのです」

「・・・じゃあ、未紅は今までずっと一人でやってきたの?」

「そうです。・・・時々私は人間だったのではないかと思うことがあります。・・・なにか悪いことをしていまい、その償いに人の魂を集めているのではないか・・・と」

落ち込むなよ・・・。

「それは違うんじゃないの?」

「え?」

「もし未紅が悪いことをしたとしたら、悪い人の魂を集めることになるんじゃないの?」

はっとした顔になる。

「今、未紅は良い魂を集めているんだから、やっぱ修行中ってところなのかな」

「そ、そうですね!」

ははっ。すげぇいい笑顔。

・・・単純・・・。

「舜はいい人ですね!」

いや・・・そうじゃなくてさ。

「何で、俺が慰めなくちゃダメなんだよ!」

「あ、そ、そうですね。・・・ごめんなさい」

素直だな~。

「敬語やめてくれ。それと」

「はい」

頷く未紅。



< 6 / 106 >

この作品をシェア

pagetop