天使の羽が降る夜に

聖夜



舜に「未紅を守って欲しい」と言われてたものの・・・急に気持ちなど変わるわけはなく・・・。

どうしたらいいのか分からないまま、仕事をしていた。

舜の命も今日までか。

・・・最後にどんな会話や表情をしているのだろう・・・そう思ったら・・・

『気になる・・・』

ということで、見に行くことにした。

本来ならこんなことはしないんだが・・・。


病室のベッドで舜の隣に座る未紅をみつけた。

「未紅。立派な天使になるんだぞ」

「分かってるよ・・・」

悲しそうな顔をしている未紅。

「俺がいなくなっても・・天使をやめたりすんなよ」

よほど未紅の事が心配なのか、自分がいなくなっても頑張れという言葉を何度もかけていた。

「・・・わかってるってば・・」

「お?今・・面倒くせぇ・・・とか思っただろ?」

「お、思ってないよ!」

「本当かな~?・・・顔にもうその話はいいよって書いてあるぜ?」

「??・・・顔に書いてある???」

慌てて顔を触る未紅。

・・・・お前はどこまでばかなんだ・・・そんなわけないだろ・・・。

「あははは・・・本当に面白いな・・未紅」

「ひど~い・・舜のばかぁ!」

舜と未紅は、笑ったり、怒ったり、泣いたり、悲しんだり・・・本当にくるくる表情が変わる。

・・・俺と未紅はこんな事は、なかったな・・・。

『好き』という言葉の中にどれだけの思いが込められているのだろう。

・・・そう思うと同時にそんな風に思い合える2人が羨ましくも思った。


沢山笑い、沢山泣いた後、2人は抱き合いキスを交わした。

・・・俺の今までのキスはなんだったのだろう・・・そう思うくらい・・・切ないキスだった。

胸に熱くなるものがこみ上げる。

・・・なんだろう・・・この気持ちは・・・・。


未紅は少しだけ力を使い、舜が皆にさよならを言える時間を与えた。

最後は舜と未紅の会話。

『・・・愛してるよ・・・』

『私も・・・愛してる・・・』

・・・これが2人のすべてなのだろうと・・・・感じた。

「愛」俺にはまったくわからない言葉、感情。

だけど、なぜか涙が止まらなかった。





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