天使の羽が降る夜に
愛などどいう言葉も感情も俺は知らない。
言ったこともないし、言ってもらった事もない。
愛するとはいったいどんな感情なのか・・・そんなことも全く分からない・・。
だけど・・・舜と未紅の事を見ていると・・・どうしようもなく切なくなる・・・。
・・・俺の命を舜に与えて、2人は幸せになった方がいいのではないか?
そんなことさえ思うようになる。
誰かの為に・・・舜や未紅の気持ちが今なら少し分かる。
・・・これが愛情なのか?
・・・いや、違う・・・また別の感情のように感じる・・・。
舜が亡くなった後、未紅はふらふらと病室を出て行く・・・。
・・・未紅・・・魂を・・・取り出すことが出来ないのか・・・?
行った先は海。
未紅はただぼーっと海を眺めていた。
涙が止まることはない・・・舜が言っていた「笑顔が消えるのが怖い」とは・・・こう言う事だったのか・・・?
何もせず、ただ泣きながら海を見ているだけだ・・・。
だが・・・そろそろ魂を取り出さねば・・・舜の魂は・・・。
俺は思い切って未紅に話かける。
「未紅」
名前を呼ばれた未紅は振り返り俺をみる。
「聖夜・・・さん・・」
『・・・ひどい顔をしているな・・・』
今まで見たことのない・・・切ない顔だった。
「ううっ」
『・・・そろそろ舜の魂を運ばないと・・・路頭に迷わせることになるぞ・・』
俺の言葉にハッとしたように病院へ急ぐ未紅。
未紅は舜に近づくとそっと顔に触れる。
「舜・・・しゅ・・・ん」
名前を呼びながら・・・また涙を流していた。
・・・舜・・・未紅のこの悲しみから俺は助け出してやる事が出来るのか?
お前のことをこんなにも思う気持ちを・・・救ってやることが俺に出来るのか?
『未紅・・・』
俺が声を掛けると、未紅は祈りを捧げる。
舜の体から出てきた魂は本当に透き通っていて綺麗なものだった。
「・・・未紅が好きになるはずだ・・・」
こんな魂の持ち主じゃ・・・俺はかなわない・・・。
・・・どうやったって・・・未紅を救ってやることなんて・・できないぞ・・・舜。