天使の羽が降る夜に

大天使様の元へと行くと

「神のルートを使って未紅・・・お前が魂を運ぶんだ」

怖い顔をして言われた。

ちょ、ちょっと待ってくれ・・・それは未紅に消滅しろっと言っているのと同じだ。

神へのルートとは長いトンネルのようなもので、中は雨と風がひどく、雷が常になっている道だ。

雨は天使の体に針のように突き刺さる。

風は吹っ飛ばされるほどだ。

そして雷に触れると体が焼かれる・・・。

俺たち門番は魂を運ぶ仕事をしているが、そのために沢山の訓練をしてきている。

その訓練している俺たちですら・・・消滅してしまうことがあるというのに・・・未紅はまだ未熟な天使・・・・間違いなく消滅する・・・。

どうしたらいい・・・どうしたら。

「分かりました、行きます!」

な・・・何を言っているんだ?

「舜の願いを叶えたいから・・・」

ああ・・・・自分の体がどうなっても・・・その願いを叶えたいというのか・・・。

俺は‥‥俺には・・・未紅を止められなかった。

あの時と同じだ・・・昔、未紅が人間に命を渡した時と同じ・・・結局俺は何もしてやれないのか・・・・。


色々なことを考えながら、俺はルートの入り口で未紅を待った。

未紅はなんの準備のないままやってきた。

・・・それで入ったら入り口で消滅するぞ・・・。

「未紅、これを」

俺は一番丈夫に出来たマントを未紅に被せた。

そして魂が未紅の体から離れないように・・・頑丈な袋と紐で首にかけた。

・・・こんなことくらいしか、やれることがない・・・。

「ありがとう・・・聖夜さん」

そう言って未紅は羽を広げる。

・・・!・・・未紅・・・お前・・・

「では、行って来ます!」

驚いてる俺に不思議そうな顔をするも・・・行ってしまった。

・・・羽が・・・成長していた。

・・・そんな馬鹿な・・・未紅はまだまだ未熟だ・・・こんなに早く成長するはずが・・・・・・・・ま・・さか・・・これも舜と過ごした結果だというのか・・・。

あの羽であれば・・・もしかしたら届けられるかもしれない・・・。

でも・・・俺はどうすればいい・・・・どうすれば・・・・・。

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