妹A ~5人兄弟+1~
第3章 オトナの事情
―言えない秘密―
放課後の誰もいない校舎の廊下を、駿は自分の受け持ちのクラスの教室へと向かっていた。
「開いてる?」
少しだけ開いた後ろのドアに手を近付いた時、いきなり掴まれた。
「えっ!」
その手は一瞬で駿の体を引き寄せた。
「先生…」
「哀川!」
甘いシャンプーの香りが一瞬、現実を遠ざける。
「私、ずっと待ってるのに…。どうして会ってくれないの?」
哀川 理彩(あいかわ りさ)は駿の体を強く抱き締めた。
「理彩…、ここは学校だろ。誰が見てるか分からない。手を離して」
「嫌!見られたって構わない!都築先生は私だけの物なんだから。先生は…先生は私だけの…」
「理彩、わがまま言っちゃダメだろ。ここは学校だ。僕達の事がバレたら大騒ぎになる。分かるよね?」
「…だって、だって、先生会ってくれないじゃない。もうずっとデートもしてくれてない!いつまでこのままなの?」
駿は理彩の体を優しく抱き締める。
答えるように理彩が駿の背中に腕を回す。
「今は会わない方がいい。僕の事、ちょっとストーカーまがいの事をしてる生徒がいる」
「知ってる。何人もいる!おまけにその子達、先生の彼女面してるのよ。私、たまらない…」
理彩は涙声になっていた。