マジック・エンジェルほたる
 人間にはそれぞれ可能性ってものがあるのよ。それは誰だって…どんな国の人だって…例外はないのよ。蛍ちゃんには「生きる価値」がある!きっときっと…いいえ、ぜったいにあるのよ!」
「でも…」
 セーラは魅力的な微笑を浮かべて、
「しっかりしなさい!泣いてたってなにも変わらないし、なんの変化もおこらないのよ!元気いっぱいに笑ってさぁ、明日という地図を手に駆け出すのよ!それっきゃないわ。さぁ、笑って!笑うのよ!」
 蛍は少し不思議そうな狐につままれたような顔をしたが、しだいに口元に微笑みを浮かばせた。「そうね。私を馬鹿にした連中を見返してやるわ!」希望の笑み…それはほんの少しの希望…駆け足ではなく、ようやく生きていく程の希望ではあるけれども、セーラの言葉は蛍に実に好ましい影響を与えたようだった…。
  しばらくして、セーラは少しだけ思い出したように、
「そうそう。蛍ちゃんにねぇ…話しておかなくてはならないことがあるのよ…」
「ーえっ?何?!なに?」
「…さっき伝説の戦士のことを尋ねたでしょう?マジックエンジェルのことを…」
「そうだっけ?アハハハ…」
 セーラは無視して、真剣に続けた。
「マジックエンジェル…つまり魔術天使は、いわば地上を、そして地上にいる人類すべてを平和に導き、魔物を封印するため天界から舞い降りた伝説の戦士のことなの」
「伝説の戦士…?」
「そう。でも、戦士たちが地上に舞い降りたのは現在からもう数千年も前くらいになるわね。その頃、地上はケイオスにおおわれていて…」
「ケイオス…って?」
 セーラは眉ひとつ動かさず続けた。「ケイオス。つまり「混沌」に包まれていた地上の世界…怪物達が人類の住むあらゆる町並みに出没して破壊をくりかえしていた時代。そうした地上へと舞い降りて、人類の平和のために戦士たちは闘ったの!
 
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