マジック・エンジェルほたる
「やっぱ…何よ?」由香は皮肉っぽくきいた。
「カンニングでもしちゃおうよ!」
「えぇ…っ??」
「私たちが救われる道はただひとつ、よ。カンニングっきゃないっしょ?やっぱ、さぁ」「でも…ねぇ。あんたはプライドってもんがないからいいけどさぁ。私の…芸術家としてのプライドが許さないのよねぇっ」
 蛍は嫌味ったらしく笑って、「あははは…由香ちゃんってばっ!!この前のテストで6点とっといてさあ。ブラインドウもなにもないじゃんよ!!」
「ブラインドウ?馬鹿じゃないの?!…そ、それに、あんたは0点だったでしょ!!」
 由香は真っ赤になって怒鳴った。蛍は、カラカラと笑っている。はっきりいってどっちもどっちであり、ふたりとも低レベルである。
「蛍ちゃん、由香ちゃん、カンニングなんてダメよっ!」
「そうよ、そうよ!」
 友達のあやと、良子、奈美がやってきて口をそろえた。この意見は至言である。しかし、この三人の女の子のルックスとかはあえて触れない。単なる脇役だからだ。
 夕方となり、辺りはオレンジ色に染まっていった。淡い黄昏…そんな雰囲気ではある。辺りがしんと光り輝くような。
「じゃあ、由香ちゃん、また明日ね!」
 蛍は校門で由香と別れて、元気よく駆け出していった。別に何をするわけでもない。ただ、好きな少女コミックとアニメ番組をみるのが蛍の習慣になっているのだ。
 チャンスはある意味では突然やってくる。突然、何のまえぶれもなく、いきなり目の前に訪れる。しかも、ほとんどの場合、人生において一度だけ訪れる。極言すれば、千載一遇の好機はたった一度きり、ともいえる。掴まなければ、暗い闇だ。
 
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