マジック・エンジェルほたる
「な、な?!まさか、これって…」
 やっとのことで声がでた。そして、「これってば、妖精じゃないのさぁ!」
 そうだった。路上に横たわって動かないものとは、天空から降ってきた(墜ちてきた))妖精セーラだったのだ。死んだのか?それとも気を失っているのか?妖精はピクリとも動かない。
 妖精というくらいだから、身長は25センチもない。顔も全身も手も何もかも細く白く、睫がやけに長い。髪の毛は「栗色」でロングであり、ソヴァージュがかかっていて、可愛らしいリボンまでつけてある。洋服はフリルつきのもので背中に羽根がついている。とにかく、可憐でピュア(純粋)な妖精だった。
「…死んじゃってるのかなぁ?」
 蛍は妖精に近ずき、顔を覗きこみながら囁くように心配していった。妖精セーラは傷だらけでボロボロだった。透明にちかい羽根にも愛らしい顔にも傷がついていて痛々しい。 とにかく、ここに放って置くわけにはいかないわ!蛍は、そっと、優しく妖精を両手で包み込むと胸元にだいてバッ!と駆け出した。
 自宅へ!
  夜もどっぷりふけていた。蛍は夕食を素早く済ませると、すぐに自分の部屋へと戻った。ー乙女チックな部屋である。カーテンもベットもどこもかしこもピンク色の「少女らしい」部屋だ。彼女は、そうしたてきらきらとした空間を命がけで愛した。
 蛍は、心配そうにベットに近付いた。彼女は、あの「妖精」を誰にもみつからずに部屋まで運ぶのに成功していた。ピンク色のベットに、妖精は寝かされていた。一応、水タオルらしきものを額に当ててもらっている。これは蛍の「博愛」の証しだ。彼女には、こういう人間性もある。それは、しんと光るようなものだ。大事な、愛の証し。
「人間にとって忘れてはならないのは人間性だ。血も涙もない人間に誰がついてくるか!人間性とは何か?それはすなわち「愛」にほかならない。愛とは何か?それはけして見返りを求めることなく与え続けること」
 鉄の女、マーガレット・サッチャーの言葉だ。この言葉は尊敬に値する。
< 6 / 192 >

この作品をシェア

pagetop