マジック・エンジェルほたる
「…う…う……うん」
 妖精セーラは、そううなるように声をあげた。そしてセーラは少し頭を軽く振った。なんだか視点がぼやけたが、それはあまり気にしなかった。しかし、次の瞬間、セーラは思いっきり驚いた。なぜって?それは、
「あのぉ。妖精さん、お体は大丈夫かしら?」
 と、目の前で覗きこんでいた少女がオドオドと尋ねてきたからだった。まさか…そんな!「…妖精さん…お名前は…?喋れるの…?」
 蛍はオドオドと、微笑を浮かべてさらにいった。セーラは唖然としながらも「あ、あなた…私の姿がみえる…の?」とやっとのことで声を出した。とても可愛らしい声である。「妖精の姿は、普通のひとには絶対に見れないものなのよ。みえるのは、赤ちゃんかもしくはある種のパワーをもったような…」
「パワーって何っ?白い粉状の?」
「いいえ。…それは、つまりその……」そう説明しながらも、セーラはハッと気付いた。 まさか!この娘が?!…でも、まさか、ね。
 セーラはオドオドと「あなた…まさか…」といって、フト、言葉をにごした。この可愛らしいが、見るからに頭の悪そうな少女が、自分の探していた「戦士」だなんて、とても思えなかった。
「でも…まさかねぇ。伝説のマジックエンジェルが…まさか、こんな娘だなんて」
 セーラは顔をプイっと横に向けて、ニガ笑いして独り言をボソボソと言った。
「マジックエンジェルって、何っ?」
 蛍は元気いっぱいに明るくきいた。この少女はほとんど人の話をきかない。いや、それを理解するだけのメンタリティがないのだ。コギャルだかマゴギャルだとかみたいなのと同じだ。つまり、頭が悪いのだ。しかし、どうでもいいことだけは耳にする。そして、たまに傷ついたりもする。極めてナーバスなのだ。
 おかしな話だ。この青沢蛍という少女のどこにも「恋の悩み」だとか「生きていく苦悩」だとか「死への恐怖」「心の葛藤」といった心理が感じられないのに…。
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