トリゴニコス・ミソス
混乱して泣きじゃくる美名を、太陽はしっかりと抱きしめた。


「――それはわからない。美名、ごめんな。

俺あのとき、何も言えなかった。

扉を出た瞬間、美名はイデアという存在自体忘れてしまったかのようだった。

しかもイデアの家があった場所も、もう何年も更地のままのような状態になってて……。

あの時の俺は、ただわけもなく怖くて、何が起こったのかさっぱりわからなくて、そのまま今日まで何も言い出すことができなかった。

美名が、ここに来ようっていったとき、ああ、ついにこの時が来たのかって思った。

何がって言われるとうまく言えないけど、とにかくここに来なくちゃいけないって思ったんだ」
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