トリゴニコス・ミソス
涙でぬれた瞳を驚きで大きくさせて美名はじっと太陽を見つめていた。

「なんで……。

なんでそんな大事なこと今まで黙ってたの?

なんですぐにイデア君を探そうと思わなかったの?

なんで私にまで隠してたりしたの!」

太陽は、寂しそうな目を美名に向けた。

「ホントにごめん。イデアがいなくなったとき美名、すごく落ち込んでたろ?

俺はそれを見てるのがホントに辛かったんだ。

でも、屋敷を出た瞬間何もなかったかのようにいつもの美名に戻ってくれた。

俺はそれが単純に嬉しかったんだよ。

もう美名のあんな姿は見たくなかった。

だから今まで何も言えずにいたんだ。

――実は俺、あの後何度かここに一人で来てるんだよ。

それに周りのヤツにイデアのことを聞いてまわったりもした。

でも、誰一人としてイデアを覚えているヤツなんていなかった。

そのうち全てが俺の夢だったんじゃないのかって思うようになっていったんだ。

みんながおかしくなったんじゃなくて、きっと俺がおかしいんだって。

でも、そんなことはどうでも良かった。

何よりも、お前が笑顔でいてくれたから……。

でも、結局はこうやって泣かせちまったけどな」
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