トリゴニコス・ミソス
そう言うや否やエオスは少女のように頬を赤らめてその少年の元へと駆け寄っていった。

「ああ、ティトノス。戻ってきてくれたのね。

もう二度とあなたを離しはしないわ。

そうだ、あの時私が忘れてしまったものを与えなくちゃ。

さあ、一緒に行きましょう」

エオスにはもう他の者の姿など目に入らないようだった。

エオスは、その少年の手をしっかりと握るとそのままどこかに行ってしまった。

その様子をわけもわからず太陽と美名は見ていることしかできなかった。

二人の姿が消えて、しばらくたってやっと我に返ると神々に対して問いかけずにはいられなかった。

しかし、その前にやることがあった。

「イデア」

「イデア君」

太陽と美名はイデアの元へと駆け寄った。

「……。た…い…よう。み…な」

イデアはやっと搾り出すような声で二人の名を呼んで、そのまま倒れてしまった。

「おい、イデア!」

「イデア君!」
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