トリゴニコス・ミソス
「おい、パン。それより、いったいどういうことだ。あの少年は誰だ？」

「うーん、だからあいつはプロメテウスの手で創られた人形に命を与えたものだって」

「じゃあ、何で顔が違うの？」

「それは、プロメテウスのちょっとしたいたずらさ」

「えっ？」

「プロメテウスは、そもそもエオスがイデアを連れ去った理由を知っていたのさ」

「なんで？　なんでイデア君は連れ去られなくちゃいけなかったの？」

「エオスがティトノスって言ってただろう？　それが理由さ」

二人の頭の中にはクエスチョンマークしか浮かばなかった。

「だから、なんで？　いい加減教えてよ！」

「ごめんごめん、ちょっと意地悪しすぎたか。

ようは、エオスはティトノスって恋人を自分の落ち度で昔失ってしまったんだ。

でも、そいつを忘れることができないでエオスはずっと沈んでいたんだ。

でもそんなときに、おそらく何かの拍子にティトノスとよく似たイデアを見つけてしまったんだろうな。

エオスはどうしてもイデアを手に入れたくなってこっちの世界へと引きずり込んでしまった。

ただ、こちらの世界に来たときにはまだほんの子供だったから、エオスもイデアが成長するまで手を出さずにいたんだろう」
< 125 / 162 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop