トリゴニコス・ミソス
「違うんだ。あの時僕は一人であの鏡に近づいた。

そして、エオスに見つかって僕はこの世界へと連れてこられた。

その後すぐ、エオスは二人にというより二人のいる世界に魔法をかけてしまったんだよ。

僕という人間が存在した事実などないっていうね。

だから、二人が心を痛めることなんて全然ないんだ。

むしろ僕のほうこそ謝らなくちゃいけない。

この前、エオスの持っている水鏡にたまたま二人の姿を見かけて、思わず二人に手を伸ばしたんだ。

まさか、二人に本当に手が届くと思ってなかったから、二人のことをちゃんとつかんでおくことができなくて、途中で二人を見失って……。

あの時は本当に焦ったよ。

僕のせいで二人がとんでもない場所に飛ばされてるんじゃないかって」

イデアは本当に申し訳なさそうな顔をして二人を見ていた。

そんなイデアを見て、美名は最高の笑顔を見せた。

「大丈夫だったよ。私たちを最初に見つけてくれたのがこのパン君だったの。

イデア君のおかげでこんな素晴らしい世界に来ることができて、私、本当に良かったって思ってる」

「おう、そうだぞ。おいらが最初に見つけてやったんだ、感謝しな」

パンは得意げな顔をしてみんなの笑いを誘った。

しかし、一人太陽だけは笑っていなかった。
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