トリゴニコス・ミソス
「なんだよ、太陽。腹でも痛いのか?」

パンの問いかけにも太陽はにこりともせず、イデアをまっすぐ見つめた。

「俺、お前のこと忘れてなかった。

確かにあの屋敷を出た瞬間何かが変わったという感じはしたけど、お前のことは覚えていた。

だけど、周りのみんなはイデアがいたという事実さえ忘れていた。

俺は本当にお前のことを見捨てたんだ。

だから、お前は俺のことは怒ってもいいんだ。

恨んでもいいんだよ」

イデアは澄んだその瞳に一瞬寂しげな表情をのぞかせたが、すぐにもとの柔らかい瞳へと戻った。
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