トリゴニコス・ミソス
「ふむ。別に私は意地悪するつもりなどない。

プロメテウスも何を心配しているのか三人がここに着たらすぐに帰らせろなどという。

――お前たち、何を私から隠そうとしているのだ?」

「別に何も隠そうなどとは思っていません」

美名はまっすぐな目でゼウスを見つめた。

「まあ、良い。お前たちの願いは聞き遂げよう。しかし、その前にその少年の顔をよく見せてくれないか?」

ゼウス以外の神々は明らかに動揺していた。

「いや、ゼウス。見るほどのことはない。それよりも、この世界の秩序を守るため早くこの者たちを元の世界へと送り届けるのじゃ」

「そうそう、見ても後悔するだけだぞ」

「この者たちも疲れています。早く帰してあげてください」

「おいらからも頼むよ」

神々がそういい募るのをゼウスはじっと黙って聞いていた。

それぞれがもう弁護する言葉を使い尽くしてしまったころ、ゼウスはおもむろに口を開いた。

「なるほどな。この人間たちは確かに何も隠してはいないようだ」

それを聞いて胸をなでおろした神々だが、その次のゼウスの言葉を聴いてその場に凍り付いてしまった。
< 134 / 162 >

この作品をシェア

pagetop