トリゴニコス・ミソス
「これは美しい少年だ。

私も様々な美少年、美少女たちを見てきたがこれほどまでに美しいものには会ったことがない。

なるほど、お前たちは私からこの少年を隠したかったのだな。

私がこの少年を自分のものにするとでも思ったか。

まあ、そうしたいのはやまやまだが、約束は約束だ。

三人とも元の世界へと戻してやろう」

ゼウスのその言葉を聞いて神々の顔には安堵の表情が、そして、太陽と美名、イデアには歓喜の表情が表れた。

ただ、一人プロメテウスだけは複雑そうな顔でゼウスを見ていた。

しかし、ゼウスの言葉はうそではなくその後すぐに三人を元の世界へと送るための準備に取りかかった。

部屋の中央に魔方陣の様なものを描きその中央に三人を立たせた。

そして、準備がほぼ完了した頃、最後に運び込まれてきたのは不思議な姿見だった。

三人がこの世界に迷い込むきっかけになった姿見とほぼ同じ大きさで同じ装飾が施されていたが、その中にある肝心の鏡が変わっていた。

そこにあったのは鏡ではなく水だった。

どうしてその水がこぼれずにいるのか、考えても仕方のないことだった。

綺麗に澄んだその水は時に揺らめき見るものを歪めるが、ぴたりと制止したときそこには三人の姿がくっきりと映し出されていた。
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