トリゴニコス・ミソス
「ふーん、そうなんだ。それよりさ、美名たちの世界ってどんなところなんだ?」

「どんなところっていわれても……。うーん、そうだなー。

こっちの世界とは違ってもっと人工的なところかな。もちろん緑もあるけど、こんなに緑豊かなところを見るのは私、初めて。

それに世界を覆う大気がやっぱり違うんだろうな。この世界に来て、空気がおいしいってこういうことを言うんだなって実感したもの。

私たちの世界って、とっても便利な世界ではあるの。何かちょっと欲しいものがあるときは、24時間やってるお店があってすぐに手に入れることができるし、遠いところに行くことがあったとしても、短時間で移動できる乗り物があったり、夏でも冬でも快適に過ごすための機械があったりって……。

でも、便利になるにつれて人間同士のつながりが希薄になってきてるのかもしれない。私たちの世界では、数年前では考えられないような犯罪が多発するようになってきてるの。

それもこれも、人間の尊厳が軽視され始めてるからなんじゃないのかって……」

 美名は自分でこんなことを口にしていることに驚いていた。普段何気なく生活を送っていて、今まで深くこんなことを考えたことがなかったからだ。
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