トリゴニコス・ミソス
美名はそんなことなど、まったく考えていなかった。

イデアに会いさえすれば、一緒に元の世界に帰れるものだとばかり思っていた。

しかし、確かにその可能性はあった。

そう思った瞬間、美名の中に迷いが生じ始めた。

イデアのことを探してここまで来たが、イデアにとっては単なる迷惑でしかないかもしれない。

もしかしたら、イデアのことをあの時見捨てた自分たちの顔などもう二度と見たくないと思ってるかもしれない。

マイナスの思考が頭の中を駆け巡っていた。

そんな美名の迷いを消してくれたのは、やはり太陽だった。

「そんなことは関係ない。イデアが帰るのを拒んだとしたら、引っ張ってでも連れて帰る。あいつは俺たちの世界の住人だ。俺たちの友達なんだ。連れ帰るのにそれ以上の理由なんていらねーよ」

「イデアの意志など無視するのかい?」

「そうじゃない。俺はガキの頃からあいつを知ってる。あいつが帰りたがっているのを感じるんだ。あいつが帰るのを拒むとしたら、それは帰りたくないからじゃない。何か別の理由があるはずだ。あいつは優しすぎるからな。だから、俺がその迷いを断ち切ってやるよ」

睨み付ける太陽の瞳を真っ向からアポロンは受け止めた。

アポロンは太陽に対する認識を変えなくてはいけないなと思った。

太陽は、アポロンが思ってた以上に勇者の素質を備えていた。

「太陽、君がどういう答えを出すのか楽しみにしてるよ」

アポロンはそれだけ言うと、後は車の操縦に専念した。



【ジアフォレティコス コズモス(異世界)・完】
< 38 / 162 >

この作品をシェア

pagetop