トリゴニコス・ミソス
「太陽!」

「来るな!」

駆け寄ってこようとする美名を制して、太陽はエオスと対峙した。

「エオス。俺たちは、美名の言うとおり一度イデアを見捨てたような形で置き去りにしてきたんだ。でも、もうあんな思いはしたくない。だから、イデアを俺たちの世界に帰してくれ。もちろん、ただでとは言わない。あんたの出す条件を何でも飲む。もし、それが叶えられなかったら俺でよければここに残る。そのかわりイデアは返して欲しい」

「……そうねぇ。あなたもなかなかいい男になりそうだから、それも悪くないけど、でもやっぱりイデアの代わりにはならないわ。

――それじゃあ、こういうのはどうかしら? イデアの代わりとなるような少年をここに連れてきて。そうしたら、イデアは返してあげる。リミットは、三日後の明けの明星が消える前まで。もし、できなかったら日の出と共にイデアに永遠の命を与える儀式を行うわ。そうすると、イデアはもうこの世界から抜け出すことはできなくなる。

どう? あなたたちにやれるかしら?」

「わかった。その約束忘れるなよ」

「ええ、スティクスの泉に誓ってもいいわ」

「ほー、それは思い切ったね。じゃあ、オレたちがその証人になろう」

そういって、ヘルメスが進み出た。

「あら、ヘルメスお久しぶり。アポロンとパンもようこそ。そうね、あなたたちに証人になってもらおうかしら。この勇気ある少年との約束のね」

「了解。じゃあ、また三日後に来るから今度はすんなり入れてくれるように門番には言っておいてくれよ」

「うふふ、わかったわ。それじゃあ、楽しみにしているわ」
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