トリゴニコス・ミソス
自分よりもよっぽど美しいという形容詞が似合うアポロンにそういわれても、美名は納得ができなかった。

しかし、そんなアポロンの意見に意外な人物が賛成の意を表した。

「こいつの意見って言うのが気に食わないけど、俺もそう思う。美名はもっと自分が周りに与える影響を考えろ。いつも俺が側にいてやれるわけじゃないんだからな」

ぶっきらぼうだが、太陽のその言葉には真意がこめられていた。

太陽にまでそんなことを言われてしょんぼりとしてしまった美名を見て、パンは慌てて話題を変えた。

「なあ、それより太陽、美名。どうするつもりだ? 三日以内にイデア以上の美少年を連れてくるなんて。そんなやつなんてそうそういないぞ」

パンの言葉に、自分たちが直面している問題を思い出した。

「そうだよね……。それに、もしいたとしてもその子にも家族がいるだろうし、いきなり連れ去っちゃたりなんかしたら、悲しむよね」

「うーん、まあそれもあるなー。なあ、父ちゃんどうすればいい?」

「そうだな。こんなときは、プロメテウスに聞くのが一番かもしれないな」

「だが、プロメテウスはコーカサスで罰を受けているんじゃないのか?」

アポロンの問いにヘルメスは涼しげな顔をして応えた。

「ああ、それなら大丈夫。つい最近許されてオリュンポスに戻っているはずさ」

「そうか、それなら話が早いな。美名、何も心配することはないよ。プロメテウスは非常な知恵者でね、きっと何かいい案を出してくれるさ。それに、何よりプロメテウスは人間の味方だからね」

今まで不安そうな顔をしていた美名も、アポロンのその言葉を聞いてパーっと明るい顔になった。

「本当ですか。良かったー。ね、太陽」

太陽は、美名の嬉しそうな顔を見て優しく微笑んだ。

「ああ、そうだな。早くイデアと一緒に元の世界に戻ろう」

「うん!」

「じゃあ、今度はオリュンポスに向けて出発だな。なにぶん時間がほとんどないから、プロメテウスの案を聞いたらすぐにそれに取り掛からなくちゃいけない。ということで、急ぐぞ!」

こうして、また一行は空の住人となった。
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