トリゴニコス・ミソス
今の美名の頭の中は、イデアでいっぱいになっているのが傍から見ても良くわかった。

神々は美名の話を興味深げに聞いていたが、太陽は複雑そうな顔で美名を見つめていた。

そんな太陽を見てパンは同情するように肩をたたいた。

「まあ、気にするな。久しぶりにイデアに会って、美名もテンションが上がってんだろ」

「別に気にしてねえよ。ただ、ちょっと意外だっただけだ」

「何が?」

「いつも三人でいた気がしたからさ。それなのに、イデアと二人だけの思い出がずいぶんあるんだなって……」

「太陽……」

「お前って実はかわいいやつだったんだな」

同情するパンに対して、ヘルメスは太陽をからかった。

「どういう意味だよ」

突っかかる太陽に、ヘルメスは涼しい顔で答えた。

「だってそうだろう? 美名ちゃんとイデアの二人だけの思い出に嫉妬して、拗ねてるじゃないか」

「別に拗ねてなんかねえよ」

「ホント、そういうところがかわいいって言うんだよ」

完全にヘルメスは太陽を子ども扱いしていた。

そんな三人のやり取りに気が付いたのか美名が声をかけてきた。

「ねえ、ちゃんと話、聞いてる?」

「聞いてるよ。ちゃーんとね。な、太陽」

太陽はヘルメスに逆らっても仕方がないと思いうなずいた。

「そう? それでね――」

美名のイデアとの思い出話は尽きることがなく、結局オリュンポスに着くまでずっと続いた。

【フィロス(友)・完】
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