トリゴニコス・ミソス
「あのね、太陽あそこ覚えてる? 町外れにあるお化け屋敷」

「……」

「……? ねえ、太陽聞いてる?」

「ああ、ごめん。聞いてる聞いてる。お化け屋敷だろう、覚えてるよ」

「実はさ、あそこ今度取り壊されることになったんだって」

「えっ!」

太陽の想像以上の反応に美名は逆に驚いた。

「どうしたの、太陽?」

「――いや、別に……。それで?」

「うん、それでね。せっかくだから取り壊される前に、一度一緒に行ってみようよ、お化け屋敷。他の人も誘ってみたんだけど、誰も行ってくれないんだもん。ね、お願い!」

美名は拝むように両手を胸の前で合わせて、懇願した。

「何でお前、そんなところに行きたいんだ?」

「何でって言われても、良くわからないんだけど、でも何か今行かなくていつ行くんだって気がして。ほら、なくなっちゃたら行きたくても行けないでしょ? せっかくの町の名物屋敷なんだから、一回ぐらい行ってみたいじゃない」

美名は無邪気にそう答えた。
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