トリゴニコス・ミソス
カロンは相変わらず無言のまま、無造作に太陽の口の中から貨幣を取り出し、面倒くさそうに太陽に船に乗るように促した。

その川はどこまでも続いているかのように見えていたが、意に反して対岸にはすぐに着いた。

船から太陽が下りると、カロンは結局一言も口をきくことなく向こう岸へと戻っていった。


改めて今渡ってきた川を眺めてみた。

その川はやはり大きかった。向こう岸で見たときよりもさらに大きい感じすらした。

おそらく、これが冥界と現世との距離なのだろう。

向こう岸から見た冥界は、確かに遠く感じたが決して届かない距離だとは思わなかった。

しかし、今こちらから見た景色は、絶望的だった。

もう、二度と向こうへ戻れないそんな気分にさせるものだった。

「ここからが、本当の冥界ってことか……」
< 84 / 162 >

この作品をシェア

pagetop