トリゴニコス・ミソス
太陽はポツリとつぶやいて、またヘルメスからもらった袋の中からあるものを取り出し、今度はそれをしっかりと手の中に握った。

そこからは、また暗く長い道のりだった。

その道を通っている間中、色々な声が聞こえてきた。それらは冥界に住む者たちの声だった。

声の主たちは、時には怒りをあらわに、時には甘いささやき声で太陽を引きずり込もうとしていた。

そんな冥界の住人たちの誘惑も、太陽は美名のことを考えることで跳ね除けていた。

それまでずっと続いていた声がぱたりとやんだ。

見ると前方に大きな門がそびえているのがわかった。

その門の奥には闇にまぎれてその全景ははっきりとは見えないが、大きな建物が建っているようだった。

おそらく、あの建物の中にペルセフォネはいるのだろう。

とにかく今は、あの門を目指すだけだった。
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