トリゴニコス・ミソス
太陽も改めて洋館を見上げた。

「美名、本当に入るつもりか?」

「当たり前だよ! せっかくここまで来たんだし。あー、もしかして太陽怖いんでしょう?」

そうからかう美名を、太陽は複雑そうな表情を浮かべながら見つめて言った。

「もし、そうだよって言ったら、入るのやめるか?」

「なに? どうしたの、太陽。この間からなんか変だよ」

「――冗談だよ。気にするな。それより、本当に今でも誰もここに住んでいないのか? もし、誰か住んでたらどうするんだよ」

「それは大丈夫! だって、誰も住んでないから取り壊されるんだもの」

「そんなもんか?」

「そんなもんよ!」

太陽はいまいち納得いかない素振りだったが、美名の何の根拠もない自信満々の態度に思わず顔がほころんでいた。

「じゃあ、行くか。怒られたら美名のせいってことで」

「もー、どうして太陽ってそう意地悪なの」

いつもの二人に戻って、じゃれあうようにしながら二人は扉を開けた。
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